2026年10月20日

監修 クローバー歯科 院長 霜山 哲一
歯科医師歴18年・インプラント歴10年
歯周病で「抜くしかない」と言われたら
歯周病で揺れている歯にも、治療で残せる歯と、
抜いたほうがお口全体のためになる歯があります。
判断の目安と治療法を知っておきましょう。
歯周病は、痛みが少ないまま静かに進む病気です。歯ぐきの腫れや出血を繰り返しているうちに、気づいたときには歯が揺れていて「この歯は残せません」と言われる。決して珍しいことではありません。
この記事では、重度の歯周病の歯が残せるかどうかの判断の目安と、残すための治療法、抜歯になった場合の選択肢、そして同じことを繰り返さないための予防までを解説します。
重度の歯周病とはどんな状態?
歯周病は、歯と歯ぐきのすき間に入り込んだ細菌によって、歯ぐきに炎症が起き、歯を支える骨(歯槽骨)が少しずつ溶けていく病気です。重度の歯周病では、骨が根の長さの半分以上失われ、次のような状態になります。
- ✅ 歯が指で押すと大きく揺れる
- ✅ 歯ぐきから膿が出る、口臭が強くなった
- ✅ 噛むと痛い、硬いものが噛めない
- ✅ 歯が伸びたように見える、歯並びが変わってきた
残せる歯・抜いたほうがよい歯の目安
同じ「重度の歯周病」でも、残せるかどうかはいくつもの条件で変わります。おもな判断材料は次のとおりです。
| 骨の残り具合 | 根を支える骨がどのくらい残っているか。CTで立体的に確認します。 |
|---|---|
| 骨の溶け方の形 | 溝のように縦に溶けている場合は、再生療法の効果が期待できることがあります。 |
| 揺れの大きさ | 上下にも動くほど揺れている歯は、残すのが難しいことが多くなります。 |
| 根の形・本数 | 奥歯の根の分かれ目まで骨が溶けていると、清掃が難しく再発しやすくなります。 |
| 全身の状態・生活習慣 | 糖尿病や喫煙は歯周病を悪化させ、治療の効果にも影響します。 |
「残せる」と判断した場合でも、その歯がどのくらいもつ見込みかを確認しておくことが大切です。逆に、残すことで周りの骨まで溶け続けるようであれば、早めに抜歯したほうがお口全体を守れる場合もあります。
歯周病の歯を残すための治療
歯周病の基本治療
歯ぐきの下に入り込んだ歯石や細菌のかたまりを取り除き、炎症を落ち着かせます。正しい歯みがきの方法もお伝えします。
再評価
基本治療のあとに歯ぐきの状態を再び検査し、改善の度合いを確認します。
歯周外科・再生療法
深い部分の汚れを直接取り除いたり、失われた骨の再生をうながしたりする治療です。当院でも、適応となる場合には再生療法をご提案しています。
揺れる歯の固定・噛み合わせの調整
揺れている歯を隣の歯とつないで安定させたり、特定の歯に強い力がかからないよう噛み合わせを整えたりします。
歯周病の方もインプラントはできる?
歯周病で歯を失った方でも、インプラント治療を受けることは可能です。ただし、歯周病の原因となる細菌がお口の中に残ったままインプラントを入れると、インプラントの周りにも炎症(インプラント周囲炎)が起きやすくなります。
🦷 インプラントの前に、歯周病の治療を
当院では、インプラント治療の前に必ず歯周病の治療を行い、お口の環境を整えてから手術に進みます。また、歯周病で骨が溶けている場所では、骨の量をCTで確認し、必要に応じて骨を増やす治療(骨造成)を組み合わせます。
抜いた歯の周りの骨が溶け続けるほど、インプラントに必要な骨も失われていきます。インプラントを考えている方は、抜歯の前にご相談いただくと、治療の選択肢が広がる場合があります。
同じことを繰り返さないために
歯周病は「治ったら終わり」ではなく、再発しやすい病気です。治療で炎症が落ち着いても、毎日の歯みがきで取りきれない汚れがたまれば、再び進行します。残した歯を守るためにも、インプラントを長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。
💡 院長のこだわり:
当院では、残せる可能性がある歯は残す方法を、抜いたほうがよい歯はその理由を、レントゲン写真等をお見せしながら説明します。そして治療後は、定期検診で歯ぐきの状態を確認し続けることを大切にしています。
歯周病を悪化させる要因
同じように歯みがきをしていても、歯周病が進みやすい方と進みにくい方がいます。次のような要因があると、歯周病は悪化しやすくなります。
糖尿病
血糖値が高い状態が続くと、歯ぐきの炎症が治りにくくなります。反対に、歯周病の治療で血糖のコントロールが改善するという報告もあり、両者は互いに影響し合う関係にあります。
喫煙
たばこは歯ぐきの血流を悪くし、炎症のサインである出血を隠してしまうため、気づいたときには進行していることがあります。治療の効果も出にくくなります。
歯ぎしり・食いしばり
歯周病で支えが弱くなった歯に強い力がかかると、揺れが大きくなり、骨が溶けるスピードが早まることがあります。
治療を始めるときには、こうした要因もあわせて確認し、お口の中だけでなく生活全体を見ながら進めていきます。
よくある質問
Q. 歯周病で揺れている歯は、固定すれば残せますか?
揺れている歯を隣の歯とつないで固定すると、噛みやすくなり、歯にかかる負担を分散できます。ただし、固定は揺れの原因である歯周病を治すものではありません。歯周病の治療と組み合わせて行うことが前提です。
Q. 歯周病の治療は痛いですか?
歯ぐきの下の歯石を取る処置では、必要に応じて麻酔を使います。当院では表面麻酔などを用いて、できるだけ痛みを抑えるよう配慮しています。
Q. 1本抜いたら、ほかの歯も歯周病で抜けていきますか?
歯周病はお口全体の病気なので、ほかの歯も同じように進行するリスクがあります。ただ、治療で炎症を抑え、定期的なメンテナンスを続けることで、進行を食い止められる可能性は十分にあります。
まとめ
- ✅ 重度の歯周病でも、骨の溶け方や揺れの程度によっては残せる場合がある
- ✅ 残す治療には基本治療・再生療法・固定などがある
- ✅ インプラントは歯周病の治療をしてから
- ✅ 再発を防ぐには定期的なメンテナンスが欠かせない